新型コロナの感染拡大を防ぐために、「次亜塩素酸水」と呼ばれる消毒液を自作しているという投稿を見て、これは理科の授業ネタになりそうだと思い、早速実験してみました。あくまで生徒に学習内容への興味をもたせるためのネタに過ぎません。ネットでは「新型コロナウイルスに効く」という情報も出回っていますが、そういったポジティブな情報を支持するものではありません。むしろ、高付加価値がついた次亜塩素酸水や、その発生装置などの市販品には疑問があります。ましてや、滅菌に使われる次亜塩素酸水を飲用したという信じられないような例も見つけました。絶対飲んだらダメです!【本文・写真提供 愛知県の中学校 教諭TAさん】
必要な装置や部品を用意しよう。
必要なものを準備しながら気付いたのですが、これは「食塩水の電気分解」としてよく知られている実験です。
電極には、金属ではなく、炭素棒を使います。電極に金属を使うと水溶液中に溶け出してしまいます。ステンレスなら溶けにくいのですが、電圧をかけるとかなり溶けてきます。ですので、電極の物質は、炭素に決まりです。炭素棒が手に入らない時は、マンガン乾電池を分解すると、取り出すことができます。長いものが欲しいなら、鉛筆の芯を使ってもよいでしょう。備長炭でもうまくいくと思います。色々試す値打ちのある実験です。
今回は、理科室にある電源装置を使いました。しかし、普通の家庭にはありませんよね。電圧は5Vで十分だし、電流が小さいので、携帯電話の充電コードでもよいし、その他、利用していないACアダプターがあればそれで十分です。
用意するもの(中学校の理科室にありそうなものばかり) ・炭素棒2本 ・竹串1本 ・爪楊枝1本 ・輪ゴム4つ ・ワニぐちクリップ付きリード線2本 ・電源装置 ・1Lビーカー ・食塩 10 g |
簡単な電気分解の回路です
電極を組み立てます
炭素棒2本をショートしないように、竹串や爪楊枝で鳥居のような形に組みます。
装置をセットします
食塩水をビーカーに入れて、電極をその中に入れます。それぞれの炭素棒にワニぐちクリップをとりつけ、電源装置につなぎます。以上。
電源を入れると、泡が発生。
陰極から泡がさかんに発生しています。これは水素です。陽極からも泡は出ていますが、これは塩素です。塩素は水に溶けやすいので、泡が目立ちません。発生しても次々に水に溶けていくのです。電圧を5Vにしたところ、電流が200mAとなりました。このまま40分間分解を続けました。
プールの残留塩素を図る器具で測ったら、濃すぎで一番上の値を示してしまったので、精製水で100分の1倍に希釈して測定しました。
結果は、0.6 ppm〜0.7 ppmです。それを100倍して60 ppm〜70 ppmということになりますね。
電気分解後も食塩が残っているので、スプレーなどで吹くと、あとで食塩分がでてきます。それを防ぐには、食塩水ではなく、塩酸を電気分解すればいいですね。
今回の実験では、1リットル作るのに、食塩10g、電力は1Wで40分程度。コストはめちゃくちゃ安い。しかし、市販では100 ppm程度の次亜塩素酸水が20リットルで12,800円という例も。水に付加価値をつけて売る商売を「水商売」というのでしょうが、これは、ぼったくり価格ではないのかな?試しに、アマゾンで「次亜塩素酸水」で検索すると出るわ出るわで面白いです。特段特別でないものを誰でも作れて、この価格!びっくり仰天の高付加価値。4000 ppmという商品もあるけど、次亜塩素酸は不安定で有効濃度がどんどん落ちてしまうと思います。使うときに作れるのが、一番よいように思います。
後日、塩酸でもやってみました
塩酸の濃度はかなり薄くてもよいみたいです。今回は、水道水1Lについて、市販の塩酸を10mL使いました。最初の希塩酸の濃度は、どこまで小さくできるでしょうか。今後のはそのあたりに取り組みたいと思います。
このページの目的は、2020年4月ごろ流行した次亜塩素酸水は、こんなに簡単にできますよ、ということの紹介です。中学3年生の生徒に、化学の学習内容に興味を持ってもらうためのネタとして書きました。
医学とは全く無関係であることを記述しておきます。僕自身は、次亜塩素酸水が、ウイルスにどのくらい効くかというエビデンスを探していません。興味のある方は厚生労働省の資料などをご覧になると良いかと思います。